音楽的要素とテクニック②

前回のブログでは、音楽的要素と結びつけながらテクニックを身につけることが重要というお話をしました。今回は指のトレーニングについてです。

 

ピアノを弾く方の多くが、習い始めた時から指のトレーニングのために何かしらの練習曲をこなしていると思います。一般的に弱いとされている薬指や小指、動きの鈍い親指などそれぞれの弱点を改善していくことはピアノを弾く上でとても重要です。

では、毎日1時間トレーニングをするとして、二通りの方法を比べてみましょう。

 

①色々な器具を使って握力や指の筋力トレーニングと、ピアノに向かいハノンやツェルニーなどの練習曲を毎日こなす

②ハノンやツェルニー、そのほかの曲を使用し、曲中の弱い指を使う箇所や和音をしっかり掴んだりする過程で毎日指のトレーニングをする。

 

どちらも正解であり、正しく行えばどちらのやり方でもしっかりと指や手の筋力はつくと思います。あるいは、熱心な方は①と②両方やればいい!と思うかもしれません。

単純に計算すると、①はピアノに向かう時間が30分、②は1時間、これを一年続けたとしたら・・・すごい時間の差ができますね。誤解しないで欲しいのは、ピアノに向かった時間が多ければ多いほど上達するわけではありません。

 

ピアノにどのように向かうのか。が一番重要なのです。

 

前回、テクニックをつける上で、「耳と歌と心」が大事だと言いました。指のトレーニングでは「耳と身体全体」に意識を集中することが大切です。

 

弱い指を鍛えるとき、例えば親指から順番に、ドレミファソ、と弾くと弱い指の箇所で転んだり音がかすれたり凸凹になってしまう、それを均等に滑らかに弾けるようにするために何度も反復練習をします。

その時に、闇雲に何十回も連続で弾くのではなく、一回ずつ耳でよく聴き、原因を探ります。弱い指が分かっていれば、その場で弱い指のみ連続で打鍵して鍛えるのも有効です。その時も必ずよく聴き、納得できる音とその指の動きをよく掴みとります。

そのように毎回耳を研ぎ澄ませ、原因を探りながら練習をすると似たようなパッセージが出てきた際にも応用が利きます。また、毎回原因を探りながら弾くので、無駄に回数を重ねることもありません。何百回もひたすら同じ箇所を弾くのと、よく聴きながら集中して10回弾くのと、どちらが良いですか?

 

上の①の方法でもしっかりと指は鍛えらるかもしれませんが、ピアノに向かわずに鍛えた分、②に比べて「耳で聴く」訓練が足りなくなってきます。一年続けたら、明らかに聴く力には差が出てくるでしょう。聴くことの大切さについては、また別の機会に書きますが、器具のトレーニングに使う30分より、耳と指を同時に鍛える30分の方がはるかに有意義で効率の良い練習時間になるんではないかと思います。

 

現在多くの指のトレーニング法があり、それについては様々な意見があるかと思います。それを踏まえた上で私は、ピアノに向かう以外で行う指のトレーニング効果は少ない、と思っています。もちろん、握力をアップさせるためや、例えば親指の鈍い動きを机上で早く動かしたりなどのトレーニングもある程度は有効かと思います。しかし、ピアノはスポーツではありません。スポーツ要素も多少は含まれますが、あくまでも音楽、芸術です。

トレーニングも音楽とともにあるべきです。音楽をベースとして耳と共に鍛えられた指は、機械のような無味乾燥な音を奏でることを拒否するので、自然と奏でたい音を出そうとする癖をつけることができます。

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