ピアノのテクニックをつけよう!と思った時、まず何をしますか?ハノン?ツェルニー?ショパンエチュード?
プロのピアニストの方も趣味で習っている方も、ハノンやツェルニーなどの指の教則本を使用することは少なくないかもしれません。もちろん指の訓練にはとても効果的です。私も子供の頃や今でも使用しています。
ただ、それらの指のトレーニングとピアノを弾く上でのテクニックを身につけるということは全く別だということを忘れてはいけません。
ピアノを上手に弾くためのテクニックをつけるには、必ず音楽的要素と一体化して身につけていかなければ意味がないのです。
フィギュアスケートに例えると、選手たちがリンク外でおこなうストレッチや筋トレ、ジョギングなどが指のトレーニング、ハノンやツェルニーです。リンク外でどれだけ鍛えていても、それだけで美しいスケーティングやジャンプは身につかないでしょう。ピアノも同じです。指のトレーニングだけしていても美しい音やレガート、力強い重厚な響きは出せません。指のトレーニングはリンクに立つための最低限の指の基礎体力をつけるためのものです。
ではテクニックをつけるにはどうしたら良いか。使用する教材は、極端に言えばどれを使ってもできます。もちろんハノンやツェルニーも使えます。ただ、トレーニングの時とは違う要素を取り入れて行います。
テクニックをつける上で大事なのは、耳と歌と心です。これを無くしては身につきません。
例えばレガート奏法に取り組む時、ただ音が繋がるように手首や指の動きを工夫するのではなく、最初にレガートにしたい部分を歌い、心で感じ、どのようなレガートがふさわしいかを考えてから実際に手を動かしていきます。その際、絶対に、絶対に耳をすませてよーく自分が出している音を聴いてください。聞き流すのではなく、よく聴いてその音を体の中に残してください。イメージしたレガートをよく聴きながら体全体で追い求めていくと、段々と手、指の動きがレガートの動きになっていきます。
手の動きを変えていったらレガートになった。
ではなく
音のイメージを歌い続けていったら、手の動きがレガートになった。
あくまでも音楽が主体です。それを忘れてしまうと、どんなに素敵なレガートの動きができても音楽的要素との結びつきがなくなってしまい、無味乾燥な演奏になってしまう危険があります。
動きから身につけたテクニックは万能かもしれませんが、どの曲でも同じ動きをすることになりかねず、全く違う曲なのに同じ音質、同じ響きになってしまうかもしれません。ベートーヴェンとドビュッシーを同じ音で弾いていたら・・・・
その都度曲に合ったイメージで手、指、体の動きを変えながらテクニックを作り上げていくことで、どんな曲のイメージにも対応できる柔軟なテクニックが出来上がります。